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2026-09-01

配送報告は届いています。荷主に答えられないだけです

荷主からの「あの荷物、いまどこですか」に即答できないのは、ドライバーの報告が足りないからではありません。日報も点呼記録も、その日のうちに届いています。それでも答えられないのは、報告が残っている単位(日付 × ドライバー × 便)と、聞かれる単位(荷物1件)が違うからです。だから毎回、人が頭の中で変換しています。報告を増やすのではなく、荷主が口にする言葉で引けるキーを1つ足す、という話です。

いまどこにあるか、本人にしか聞けません、という記事のアイキャッチ。運送会社の事務が荷主からの配送状況の問い合わせに即答できない構造を扱う。

「昨日出した分、着きましたか」と聞かれたところから

荷主からの電話は、たいていこの形で来ます。「昨日お願いした分、もう着いていますか」「先週金曜に出した△△店向けは、いつ着きますか」。聞いているのは荷物1件の、いまの状態だけです。

受けた側は、まず日報の束をめくります。昨日の日付を出して、どのドライバーの、何便目に積んだかを思い出そうとします。思い出せれば見つかります。思い出せなければ、探しても出てきません。

物流倉庫で、ヘッドセットをつけた担当者が問い合わせに応対している様子。
荷主が聞いているのは、荷物1件のいまの状態。受けた側は、その1件がどの便に入っていたかを思い出すところから始めることになる。

そこでドライバーに電話します。運転中なら出られません。荷待ちで手が離せないこともあります。折り返しを待ち、それから荷主に折り返す。1件の問い合わせが、事務とドライバーと荷主の3人の時間を止めます。

しかも、この電話は毎日かかってきます。荷主が変われば聞き方も変わります。そして毎日、同じように探し直しています。

報告が足りないわけではありません

運送業の記録は、他の業種と比べてもよく揃っているほうです。点呼記録も運転日報も、法令上の義務として毎日残ります。送り状の控えもあります。ドライバーからは「◯◯センター着きました」とLINEも来ます。

それでも荷主に即答できないのは、これらが荷主に答えるために書かれた記録ではないからです。日報が答えているのは「誰が、いつ、どう走ったか」で、これは運行管理のための問いです。書式もその目的に合わせて作られています。

荷主が聞いているのは、まったく別の問いです。「あの荷物は、いまどうなっているか」。目的の違う記録を、あとから別の検索に使おうとしているので、そのたびに人が変換することになります。

残っている形日付 × ドライバー × 便9/1 佐藤 1便積んだ荷物:A社 3件 / B社 1件9/1 佐藤 2便積んだ荷物:C社 2件 / A社 1件9/1 田中 1便積んだ荷物:B社 4件聞かれる形荷物1件A社「9/1に出した△△店向け」便もドライバーも言われないどの便か思い出せる人にしか引けない。出てこなければ本人に電話する記録は足りている。荷物側からの入口だけが無い
図1:日報は1枚の中に複数の荷物をまとめて持っている。荷主はその1件だけを指して聞くため、束をほどく作業が毎回人の側に残る。

その確認の電話も、ドライバーの拘束時間の中にあります

探して出てこなければドライバーに電話する、という手当てには限界があります。2024年4月から、トラック運転者には改善基準告示による拘束時間の上限が適用されています(原則として1年3,300時間、1か月284時間。厚生労働省。出典は末尾)。

この上限は、運転している時間だけを数えているわけではありません。事務所からの確認の電話に出て答えている時間も、その中で起きています。1本あたりは数分でも、1日に何度もかかれば無視できる量ではなくなります。運転中なら、そもそも安全上の問題になります。

事務側の人手にも余裕はありません。国土交通省の集計では、貨物自動車運送事業者62,383者のうち、従業員10人以下が30,759者と、全体の49.3%を占めます(令和7年3月31日現在。出典は末尾)。事務が専任で1人、あるいは配車係が電話も伝票も兼ねている会社が、半数近くあるということです。探す時間を人数で吸収できる構造になっていません。

足すのは報告ではなく、キーを1つだけ

ここで報告項目を増やすと、たいてい失敗します。走っているドライバーに書く手間を足しても続かず、続かなければ記録の穴が増えて、かえって答えられなくなります。

変えるのは1点だけです。荷主が口にする言葉で引けるキーを、報告の中に必ず含めます。送り状番号、注文番号、店舗名と着日——荷主が電話で言う言葉そのものです。日付とドライバーと便は、これまでどおりそのまま残します。

いま荷主から電話日報を探す便が分からないドライバーへ電話運転中・荷待ち中折り返し待ち回答止まるのは3人ぶんの時間これから報告にキーを1つ送り状番号・店舗名荷主から電話その言葉のまま引くその場で回答ドライバーに聞かずに済む範囲が増える
図2:報告の量は変わらない。変わるのは、荷主の言葉から直接引ける入口があるかどうかだけ。

ドライバーに書式を課さないために、AIを間に置く

キーを含めると決めても、決まった様式で書かせようとすると止まります。ドライバーは運転席か荷台の横で、片手で入力しています。項目が5つ並んだフォームは埋まりません。

そこで、書き方はいまのままにします。実際に届くのは、こういう1文です。

ドライバーからの報告(そのまま)

◯◯センター13時ちょい前着。パレット12枚おろし。伝票の控えもらった。次△△店15時予定、下道混んでます

この1文から、決めた項目だけを抜き出して1行に揃える——ここが生成AIの役割です。人が書式を覚えるのではなく、自然文を定型に変換する側にAIを置きます。

揃えたあと(台帳に入る1行)

着荷先:◯◯センター / 状態:荷降ろし完了 / 時刻:13:00頃 / 数量:パレット12枚 / 伝票控:受領 / 次の予定:△△店 15:00見込み

報告そのものの手間は増えていません。増えたのは、あとから荷物側で引ける形になっていることだけです。

書かれていないことを、補わせない

ここには必ずガードレールを付けます。報告に書かれていないことを、AIに埋めさせないことです。

配送状況の答えは、荷主にとっては事実の連絡です。「到着済み」と伝えたものが実は未着だった場合、荷主は自分の客に着荷を伝えてしまっています。謝るのは荷主で、原因は運送会社側にあります。推測で埋めた1行が、そのまま信用の問題になります。

任せるAIに渡してよい

  • 自然文の報告から、決めた項目を抜き出す
  • 「13時ちょい前」を「13:00頃」のように表記を揃える
  • 荷主ごとの呼び方(店舗名・注文番号)を台帳の表記に対応づける
  • その日まだ報告が来ていない便を一覧にする
  • 荷主への返信文の下書きを作る

持つ人が必ず確認する

  • 到着したかどうかの断定(書いていなければ空欄)
  • 着荷時刻を、予定から推測して埋めること
  • 遅延の原因を、報告に無い理由で説明すること
  • 破損・数量違いなど、事故に関わる判断
  • 荷主にどこまで開示してよいかの線引き

人が必ず決める3つ

この仕組みで、社内の判断として残るのは3つだけです。ここが決まらないと、キーは決められません。

1

荷主が何と呼んでいるか

送り状番号で言ってくる荷主もいれば、「△△店向け」としか言わない荷主もいます。自社の伝票番号で聞いてくる荷主は、まずいません。キーは、荷主の口から出る言葉で決めます。自社にとって管理しやすい番号を選ぶと、結局そのたびに変換することになります。

ここを間違えると、全部やり直しになる

2

どこまで答えてよいか

着荷時刻をそのまま伝えてよい荷主と、着荷の事実だけを伝える荷主があります。荷待ちの状況や、他社の荷物と混載していることは、伝えてよい情報とは限りません。答えられる範囲を先に決めておかないと、事務がその場で判断することになります。

判断を現場に残すと、答えがばらつく

3

傭車に出した分をどうするか

自社便なら報告は上がってきますが、傭車・下請けに出した分は自社の日報に載りません。それでも荷主から見れば同じ1件で、区別せずに聞かれます。ここを空白のままにすると、答えられる荷物と答えられない荷物が混ざります。協力会社にどこまで求めるかは、取引の条件そのものになります。

社内だけでは決められない唯一の項目

キーの決め方は、荷主の構成で変わります

ここまでは、どの運送会社でも同じように考えられる部分です。実際に決める段になると、自社の事情が入ってきます。

  • 荷主が数社か、数十社か。数社なら荷主ごとに呼び方を合わせられますが、数十社あると、共通のキーを1つ決めて対応表を持つ形になります
  • 報告をどこで受けるか。LINE、電話、車載端末のどれで受けているかによって、揃える工程を置ける場所が変わります
  • チャーターか、路線・混載か。1便1荷主なら便がそのままキーになりますが、混載だと便と荷物が1対多になり、必ず荷物側のキーが要ります
  • 傭車の比率。自社便が中心か、傭車が中心かで、先に手をつける場所が変わります
  • いま入っている仕組みとの関係。デジタコや動態管理を入れている場合、車両の位置は分かっても、荷物と結びついていないことがあります

荷主の数と、荷物の積み方と、傭車の使い方。この3つで答えが変わるため、汎用の手順で書けるのはここまでです。最後の一歩は、自社の荷主構成に当てはめないと埋まりません。

よくある質問

日報も点呼記録も毎日つけているのに、荷主の問い合わせに即答できないのはなぜですか
記録が残っている単位と、聞かれる単位が違うためです。日報は日付・ドライバー・便の単位で残り、1枚の中に複数の荷物がまとめて入っています。荷主はそのうちの1件だけを指して尋ねるため、どの便に入っていたかを人が思い出さないと引けません。記録が足りないのではなく、荷物側からの入口が無い状態です。
動態管理システムを入れれば解決しますか
車両がいまどこにいるかは分かるようになりますが、それだけでは荷主の質問には答えられません。荷主が聞いているのは車両の位置ではなく、特定の荷物が着いたかどうかだからです。車両の位置と荷物が結びついていなければ、結局どの便に積んだかを人が思い出すことになります。先に決めるべきなのは、荷物を特定するキーをどうするかのほうです。
ドライバーに報告項目を増やしてもらえば済むのではないですか
項目を増やすと、報告そのものが止まりやすくなります。ドライバーは運転席や荷台の横で片手で入力しているため、項目の並んだフォームは埋まりません。書き方は自然文のままにしておき、そこから決めた項目を抜き出して定型に揃える工程を後ろに置くほうが、記録が途切れません。書式を覚える役目を、人からAIへ移すという考え方です。
AIが配送状況を間違えて答えるのが不安です
報告に書かれていないことを補わせない設定にすることで、多くは防げます。「13時着予定」という報告から「到着済み」と書かせないこと、分からない項目は空欄のまま返させることの2つが要点です。空欄であればドライバーに確認すればよいだけですが、推測で埋められた行は、間違っていても正常に見えるため気づけません。荷主への回答は事実の連絡なので、ここは必ず人が確認します。
傭車に出した荷物は、どう扱えばよいですか
自社の日報には載らないため、協力会社から何をどの形で受け取るかを取り決める必要があります。荷主から見れば自社便も傭車も同じ1件で、区別せずに聞かれます。ここを決めないまま進めると、答えられる荷物と答えられない荷物が混ざり、荷主から見た応答の質が便ごとにばらつきます。社内の運用だけでは決められない唯一の項目です。

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本記事に出てくる報告の文面、荷物の件数、便の構成は、構造を説明するために置いた作例であり、実在の会社のものではありません。1件の問い合わせにかかる時間についても実測値ではなく、会社の規模、荷主の数、荷物の積み方によって大きく変わります。動態管理システムや配車システムの推奨は行っていません。生成AIの挙動は、利用するサービス、モデル、指示文によって異なります。荷主への情報の開示範囲については、運送契約と自社の規程をご確認ください。

参考:

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